和柄とジャパネスク
幸福や愛、人など近すぎると見えなくなるものはいろいろあるけど、そこに文化も含まれるらしい。
そう感じるのは和柄のものに触れた時。
なんだか懐かしいような、それでいて新しいものを発見したような不思議な気持ちになる。
「和」のなかにいるはずなのに。
「定式幕(じょうしきまく)」という歌舞伎の舞台で使われる三色の幕があります。
それが何色から順番に並んでいるか正確に思い浮かぶ人は、きっと普段から仕事や趣味で自発的に歌舞伎にかかわっている人か、日本の文化というものを俯瞰的な視点から見ている人でしょう。もしかしたら歌舞伎好きの外国人かもしれない。

洋装の中に和テイストを取り入れたデザインは定番となっていますが、一昔前までは野暮ったいか、逆にエッジの利きすぎたモチーフとして敬遠されていました。
いつからか、粋でモダンなスタイルとして再注目。それも古さの中に新しさがある、という価値観がプラスされて。
つまり、それだけ和柄というものが私たちの日常生活の中に存在していないということ。
普段見えていないからこそ新鮮に感じる。本当はずっと昔からすぐ傍にあったのに。
和柄を現代風にアレンジして改めて世に出した人たちは、この事実に気が付いたからかもしれません。
そこに可能性を見出したからこそ、ともすればミスマッチになりうる試みに挑んだのでしょう。
その狙いは見事に的中。
今や和柄は現代ファッション・デザインの選択肢の一つとして、その地位を確立しました。
粋で雅な和の紋様。
なじみがあるようでいてどこかよそよそしいこの柄は、人の表情にも似ているように思います。
正面から見ただけではわからないような、いくつもの面様が潜んでいる。
そこが魅力であり、奥深いところ。
日本に住んで、日本を知っているつもりになっているが、実のところはまだあまりわかっていないのかもしれない。
和柄に惹かれるのは、現代の私たちにとって未知ということも魅力も一つなのでしょう。