アクリル繊維の特徴は?ウールとの違いや選び方
2023/03/30
服の繊維として利用されるアクリルは、ポリエステル・ナイロンと共に三大合成繊維といわれ、合成繊維の中でも多く使用されています。
服に限らず絵具や板など、さまざまな異なるジャンルの製品にも多く利用され、とても身近な素材のひとつです。
ウールとの違いやアクリル素材の服のお手入れを知って、自分に合った素材を選ぶようにしたりお気に入りの服を長持ちさせるようにしていきましょう。
アクリルとは
アクリルはアクリル樹脂やアクリル繊維の略称で、「樹脂」と「繊維」では材料が異なるので別のものです。
アクリル樹脂は絵具や板に、アクリル繊維は衣服に使われています。
ここでの「アクリル」は「アクリル繊維」としてお伝えします。
アクリルは、石油から取れる原料を使って作られたアクリロニトリルを材料にして繊維をつくり、糸にしていきます。
アクリロニトリル – wikipedia
ウールの特徴に近いアクリル繊維
アクリルは合成繊維のひとつです。合成繊維というのは何かしらの天然繊維に近づけてつくられるものが多く、アクリルは「ウール(羊毛)」に似せて開発された繊維です。
ウールは羊の毛を材料とした、ふんわりした柔らかさと暖かさが特徴の天然素材です。
この特徴から、セーターなどのニットアイテムやマフラー、毛布などによく使われます。
ウールがふわふわなのは、繊維の中に空気をたくさん含むことができるためです。
やわらかさと暖かさを実現するには空気をたくさん含ませることが必要で、アクリルは人工的にこの機能を持たせています。
空気をたくさん含むように糸を加工することをバルキー加工と言います。
バルキー(bulky)は「かさばった、分厚い」という意味で、この加工をすることで空気をたくさん取り入れることができ、ウールのような風合いが実現します。
参考 : バルキー加工とは | 繊維用語集 | トータス株式会社
バルキー糸
バルキー糸は収縮させる繊維と収縮しない繊維を混ぜて、繊維の間に空気を含ませた糸のこと。
このバルキー糸によって生地をつくるとふんわりとした風合いを出すことができます。
バルキー(bulky)は英語で「かさばった、分厚い」という意味。繊維がかさばるためバルキー糸とよばれます。
アクリルの特徴とウールとの違い
風合いや保温性、シワのつきにくさなど共通点の多いアクリルとウールですが、もちろん違いもあります。
ウールより暖かさが劣るアクリルですが、それでも保温性は高い方ですし、ウールのデメリットをカバーしている部分もあります。
アクリルの方がウールより軽いのも違いとしてあげられます。
丈夫で虫食い被害が発生しにくいのはアクリル
ウールのような動物性の天然素材は虫たちの好物で、どうしても虫食いやカビが発生してしまいます。
高かったのにすぐに虫に食われてしまった…なんてことも珍しくありません。
そういったことから、価格の割に長持ちしないことが問題点としてあげられますが、アクリルにはその心配は無用です。
化学繊維であるアクリルは虫に食われにくく耐薬品性もあります。
アクリルのような合成繊維は、摩擦や引っ張りに対して耐久性があり、丈夫さが自慢の素材。
耐候性もいいので、長時間紫外線をあびて変色する、といったことが起きにくいです。
価格はアクリルの方が安い
価格を抑えられるのはアクリル。天然繊維のウールは価格が高くなりやすいです。フェイクファーとよばれるものは、ほとんどアクリルでつくられます。
ウール100%ではなく、何割かアクリルを混紡して価格を下げたりすることもあります。
発色はアクリルの方が良い
ウールよりアクリルの方が発色性が良いです。色が入りやすくきれいに染色できます。デザイン性の高いアイテム、鮮やかな色合いが好きな方はアクリル素材の方が、好みのアイテムが見つけやすいと思います。
逆に言えば、ウールではそういった色を見つけるのは難しいということですね。
毛玉・静電気・熱に気をつける
アクリルの短所は毛玉ができやすく、静電気が起きやすい、そして熱に弱いことです。
アクリルに限らず合成繊維は、毛玉ができやすく取れづらい素材です。また静電気も発生しやすいです。
自然に毛玉が取れることが少ないので、毛玉はまめに取っておかないと毛玉だらけになってしまいます。
静電気が起こるとホコリがつきやすくなり、毛玉もできやすくなります。
きれいな状態を保つためにも静電気対策はしっかり行いましょう。
熱を加えると縮んでしまうので、洗濯後の乾燥機は使わず陰干しがおすすめです。
吸水性・吸湿性が低くベタつきが気になるアクリル
アクリルは吸水性・吸湿性が悪く、汗を吸収してくれません。生地が汗を吸ってくれないと湿気がこもってベタつきやすくなります。
ウールは吸水性・吸湿性に優れているので、汗をかいたり湿気の多い時にはウールの方が快適です。
服の内側の水分は服から放出されないと中に留まってしまいます。一度汗をかくと長時間ベタベタしたまま過ごすことになってしまう可能性があります。
吸水性がよくないということはデメリットだけではありません。実は調味料や飲料など服に染み付くのをある程度遅らせることができます。
ただし、撥水加工をしていないものは水を弾くわけではないので安心、というわけではありません。
この面においてはケースバイケースで使い分けてもいいと思います。
吸水性の高いインナーを着ると大分着心地が変わるはずです。肌に触れる部分が多い時はウールの方がおすすめです。
アクリルとウールどちらがいい?
どちらにもメリット・デメリットがあります。
価格が安いのはアクリルなので、手が届きやすいですね。ウールは価格は高くなりますが、天然繊維ならではの魅力があります。
価格を安く抑えたい!
購入した後の手入れが面倒くさくない方がいい!
汗かきだから吸湿性は絶対に欲しい!
などといった、自分のこだわりによって選び方は変わるはず。
また化学繊維も天然繊維も肌に合わない人がいると思います。特に化学繊維は薬品を使用しているため、気にする人も少なくないでしょう。
それぞれの特性の違いを知って、自分に合ったものを選んでいきましょう。
アクリルの洗濯とお手入れ
アクリルはデリケートな衣服に使用されることが多いので、少し気にしてお手入れしましょう。
ネットに入れて生地の伸びと毛玉防止
アクリルは毛玉ができやすい素材です。毛玉は他の衣類との摩擦によってできてしまうので、裏返して洗濯ネットに入れて洗いましょう。丸めるようにして入れることで、より毛玉を防げます。
また洗濯ネットに入れることで、生地が伸びるのを防ぐこともできます。
洗濯機は手洗いコースで
洗剤はおしゃれ着用の中性洗剤、洗濯機で洗う場合は、手洗いコースといった優しく洗うコースにします。
汚れがひどい時には中性洗剤をつけ、軽く叩いて汚れを浮かせて洗濯します。
ゴシゴシこすったりすると生地を傷めてしまうので注意です。
ぬるま湯で洗うのがベター
30°Cくらいのぬるま湯で洗うのがおすすめ。
ぬるま湯の方が汚れが落ちやすいことと、ウールやカシミヤなどの素材が混紡されている場合、冷たい水で洗うと縮んでしまいます。
脱水は短めに
アクリルは速乾性に優れているので、濡れても乾きが早いという特徴があります。
脱水時間は短めでOK。短時間にすることで生地へのダメージを軽減するとともに、毛玉予防にもなります。
アイロンは当て布をする
アクリルは熱に弱いので、アイロンは必ず当て布をして、低温でかけます。
もしくはスチームアイロンを浮かせて、形を整えるような形でかけるのがおすすめです。
毛玉は定期的に処理
摩擦が起こるとどうしても毛玉はできてしまいます。アクリル素材は毛玉が自然には取れづらいので、定期的に毛玉チェックをして処理しましょう。
他の素材と混ぜて短所を緩和
アクリルはコットンやポリエステルなど、他の素材と混合しやすいのも特徴のひとつ。
他の素材と合わせることで、短所を緩和できます。
ウールとアクリルを混紡すれば、ウール100%よりも価格を抑えつつ、柔らかい風合いとアクリルの短所であるベタつきをおさえることになります。
アクリル製品に限りませんが、短所を緩和してくれるような素材が混紡されているかもみてみると、自分に合ったモノが選びやすくなります。
また繊維の弱点を補う機能を持たせたものもあります。静電気や毛玉防止、耐熱性をあげたものや抗菌防臭加工などがあげられます。
今やひと口に素材の特徴だけでは選びきれないものがあるのも確かです。いろいろな素材や加工を知って自分に合ったモノを手に入れていきましょう!