ビスコースとは?レーヨン素材を詳しく知る
2022/06/09
ビスコース(viscose)は元々「人工シルク」として利用されていました。
人工シルクという名前の通り、シルクのような質感とドレープ感が特徴の素材です。
オールシーズン着用できる素材で便利に使い回せます。
動物性のシルクが肌に合わない、という方でもシルクのような感じのアイテムを取り入れたい時には、コーディネートに取り入れるのもおすすめです。
ビスコースとは?レーヨンとは違う?
ビスコースはレーヨンの一種で、一般にレーヨンといわれるものはビスコース・レーヨンのことを示していることが多いです。
他の繊維(素材)となじみやすいので混紡や交織によく使われます。
混紡・・・ 二種類以上の違う繊維を混ぜて糸を紡ぐこと。
交織・・・ 種類の違う糸をまぜて織ること。
ビスコースはいい面もあるのですが、弱いところもあるので素材をかけ合わせて生地を作ることも少なくありません。
ビスコースについてさらに詳しい内容をお伝えするために、レーヨンのお話もしていきたいと思います。
レーヨン素材について
シルク(絹)を目標にして、人工的に繊維を作ってできたものがレーヨンです。
レーヨンが出発点となり、化学繊維は発達していきました。
レーヨンは繊維産業の中心となっていたときがあり、社名に「レーヨン」を使っていた会社がいくつもありました。大手化学企業の東レは「東洋レーヨン」、大手化学メーカーのクラレは「倉敷レイヨン」という社名だったのです。
原料はセルロース
ビスコース・レーヨンの原料は木材パルプ(木のくず)。この中にあるセルロースを取り出し、化学反応を起こして糸の元となる繊維を作ります。
原料は紙と同じなんですよ。
「ビスコースができるまで」参照記事 :
ビスコースとは | 製品案内 | レンゴー株式会社
【高校化学】「ビスコースレーヨン」 | 映像授業のTry IT (トライイット)
このようにセルロースから再生されて作られる繊維の総称がレーヨンです。
レーヨンの種類
レーヨンは、原料や製法の違いによってさらに細かく分けられます。
- ビスコース・レーヨン
- キュプラ
- ポリノジック
- リヨセル(テンセル)
- モダール
ビスコース法という製法で作られたものが「ビスコース・レーヨン」です。
このビスコース・レーヨンを単にビスコースと呼ぶことがあり、一般的にレーヨンといったらこのビスコース・レーヨンのことを指します。
キュプラはリンターという綿花のくずから作られるもの。ベンベルグという商標で旭化成(株)でのみつくられています。
ポリノジック、リヨセル(テンセル)はビスコース・レーヨンの改質した繊維で、強度がさらに強く、水に濡れても縮みにくいものになっています。
モダールはブナの木を原料とし、レーヨンの水に濡れると強度が落ちるという欠点を克服した素材です。レーヨンの美しい見た目はそのままに水洗いができるというメリットがあります。
レーヨンは持続可能な再生繊維
レーヨンは天然繊維でも合成繊維でもありません。天然材料から化学薬品によって繊維として再生させるため、再生繊維といわれます。
合成繊維は完全に人工のものですが、再生繊維は一部を人工的に作り出したものです。
木材を原料としたビスコースは土に埋めると分解される持続可能な素材で、廃棄物をほとんど出さずに生成することができるため、環境に優しい素材と言えます
今もさらに生地の製造技術は進歩しています。多くのメーカーで環境にやさしい持続可能な繊維を作る取り組みを行っています。
このように持続可能なエコ素材を使用することが今後さらに増えていくでしょう。
SDGsが重要になった今、私たち消費者もそういった商品を選べるようにしていきたいものです。
ビスコースの長所
- シルクのような質感
- 軽くて丈夫
- 吸湿性・吸水性があり静電気を起こしにくく、夏場でもさらっと着れる。
- 色落ちしにくく、日焼けしにくい
人工シルクとしてつくられたため、光沢感があり、しっとりとやわらかく、なめらかでつるんとした肌触りがしっかり再現されています。
美しいシルエットと光沢感があるため、高級服の裏地や下着などにも使われます。
このリッチな質感から、ワンピース、スカート、ブラウスといったアイテムのコーディネートでエレガントスタイルやフェミニンスタイルにぴったりです。
シルクは虫やカビに弱いですが、ビスコースであればそれらに強いのも大きなメリットです。
またどちらかというと使う側より作り手側のメリットになりますが、
- 染色・プリントしやすく、発色も良いためデザイン性のあるアイテムがつくれる。
- 体にフィットしやすく、ドレープ性も高いため、美しいシルエットがつくれる。
といったことも長所としてあげられます。
ビスコースの弱点
- 水に弱くシワになりやすい
- 摩擦に弱く色落ちしやすい
弱点は水に弱いこと。水シミができやすく、濡れると縮んでしまったり強度が下がります。
雨や水がついたまま放っておくとシミになる可能性大なので、すぐに乾かしましょう。
きれいに長持ちさせるために、汗をかきやすい場面や直接素肌に着ることは避けた方がいいです。
摩擦もビスコースの弱点です。すれると生地が傷みやすく、白くなってしまうのでゴシゴシこするのは絶対NG。
色落ちもしやすいので要注意です。
ビスコース素材の洗濯
水に弱いビスコースは、洗濯に気をつけることで長持ちするかどうかが変わってきます。
洗濯すると縮みやすく、シワになりやすいのがビスコース洗濯の難点。洗濯は要注意な素材です。
洗濯表示チェックは必ずチェックを。洗濯機で洗えるものもありますが、洗濯機より手洗いするか、クリーニングに出す方がお勧めです。
クリーニングのマークが付いていても家で洗濯をすることもあるかと思いまが、ビスコースに関しては水洗い不可であればクリーニングに出すようにした方がいいです。
とにかく縮みやすい素材のため、大人サイズが子供サイズくらいに縮んでしまう可能性もあるようです。
洗剤はドライ専用かおしゃれ着洗い用
通常の衣料用洗剤ではビスコースにダメージが強く出てしまいます。
家庭洗濯不可のビスコース衣類を洗ってしまって、風合いが変わってしまった例もありました。
参照 : ビスコース&ポリエステルのブラウスを洗ってしまいました | 教えて!goo
アルカリ洗剤(粉石けん)はビスコースを溶かしてしまうこともあるそうです。粉石けんで洗うと、縮んでごわごわになってしまう可能性があるので洗剤選びも重要ポイントです。
短時間で洗えて洗剤切れの良い「ドライ専用洗剤」やエマールなどのおしゃれ着洗い洗剤(中性洗剤)を使用するようにしてください。
デリケートな素材を洗うときにおすすめなのがプロ・ウォッシュ。クリーニング店がおしゃれ着を水洗いするために特別に開発された洗剤です。業務用洗剤に近い仕様で、ダメージを少なく汚れを落とし、ふんわりとした風合いを保てる優れものです。
洗濯機で洗えるもの
「おまかせコース」には設定しないように。洗濯ネットに入れて「手洗いコース」などの優しく洗うコースにしましょう。
脱水後はすぐに乾かしてください。極力水に濡れている時間を減らしましょう。
手洗い
ビスコースの洗濯する時のポイントは短時間で洗い上げることです。縮んでしまう前に1〜2分くらいを目安に終わらせましょう。
縮みきる前に洗濯できると、干すときに軽く引っ張りながら形を整えるだけで元に戻りやすくなります。
スムーズに洗えるように段取りを整えておきます。
洗う前に洗剤水とすすぎ用の水をあらかじめ用意するなど、水に浸されている時間を短縮できるように工夫しましょう。
繊細な衣類は力をかけない振り洗いがおすすめです。
数十秒程で素早く洗い、サッとすすいですぐに脱水して干します。
ビスコースは水切れが良いので脱水時間は短くてOK。洗濯機の脱水であれば1分程度あれば十分に脱水できます。
こする、しぼるは優しく
ゴシゴシこすったり、ギューっと絞るのもNG。
水分がある状態で強くこすってしまうと、繊維が分繊して白っぽく見えるようになってしまいます。
また汗をかいてそのままにしておいたり、部分的に水に濡れたり水溶性の汚れが付くと、その部分が「あと」になりやすいです。そうなってしまうとクリーニングに出しても落ちづらくなってしまいます。
水濡れしてしまったり飲食物をこぼしてしまった時は、乾いたタオルでこすらずにたたいて汚れを少しでも取り除くようにしましょう。
アイロンがけ
シワになりやすいビスコースはアイロンがけをしたくなりますが、注意が必要です。
最大温度は160℃まで。中温(140〜160℃)の設定、またはスチームアイロンで。
当て布をしてアイロンをかけることで生地に直接アイロンの影響を与えずにすみます。
シワになりやすいので、保管はたたまずハンガーに吊るすのが良いです。
ビスコースファッション
シルクに似た素材なので上品さや華やかさを出したい時にビスコースはぴったりです。
ビスコースも注意したい点はあるものの、シルクほど取扱いを気にする必要がないので、ちょっとしたお出かけにおすすめです。
吸水・吸湿性に優れているため蒸し暑い夏の季節にもおすすめです。
シルクのような光沢や質感によって、フェミニン・エレガントスタイルのワンピースやブラウスに多く使われます。
スキッパーネックシャツ風ワンピース | SAISON DE PAPILLON
繊維が細くしなやかなビスコースは、身体のラインにきれいに沿ってくれます。シンプルなニットやカットソーと合わせてエレガント&スタイルアップにおすすめです。
ランダムリブモックネックニットプルオーバー | SAISON DE PAPILLON
素材を知って服を選ぶ
ビスコースはシルクのような素材感が魅力的なのですが、デリケートに取り扱わなければ長持ちしない素材でもあります。
素材を知ることでお気に入りの服を長持ちさせることができます。
またエコが当たり前になった今の時代、環境に優しい素材が身近になっていくでしょう。見た目や機能も大切だけど、こういった「エコ」も意識しながらファッションを楽しんでいきましょう。